とても理不尽なこと


入院から4日が過ぎて、Rufiを迎えに行く。


「ニャン、ニャン」


病院の待合室にいると、いつもの声が漏れ聞こえてくる。


狭いケージに、4日間閉じ込められたままだったことを思うと、治療のためとは言え、可哀想なことをしたとおもう。


苛立っていたのか、ケージの中のRufiはまるで表情が違っていて、別の猫と対面しているような気さえした。 


ところが、看護婦さんによれば、入院中の様子は人懐っこさが全開であったらしく、誰かがケージに近づくとゴロゴロ喉を鳴らしてすり寄って来たりしたそうだ。


3日目からは食欲も旺盛になり、出されたものは完食しているという。


「もう、これで完治して欲しい。」


祈るような気持ちで、病院を後にする。


家に帰り、秋の陽だまりの中で、まったりと寛ぐRufi。


その穏やかな姿を見ていると、2ヶ月半に及んだ治療の心配を忘れて、こちらの心も平穏になる。


点滴治療の効果が現れたのだろう。


退院以降、カンピロバクター菌が再発生することはなかった。


徐々に元気を取り戻して行くRufi。


そんな喜びの気持ちとは裏腹に、売主であるブリーダーとの間では、トラブルが発生していた。


彼女の許可なく入院させたことが、譲渡契約の取り決めに反する。


それ故、Rufiを連れ戻しに来るというのだ。


衰弱しきっている愛猫の姿を目前にして、ブリーダーからの許可もあったものではない。


事態は緊急を要していた。


できる限りのことをして助けたい、と思うのが飼い主の心情であろう。


むしろ、そんな時は、飼い主の心情に寄り添って共に案じてくれるのがブリーダーだとおもっていた。


詳しいことは省くが、そもそも譲渡契約には、先方の主張に該当するような取り決めは存在せず、類似の要望事項を曲解しているのに過ぎない。


こちらからすれば、到底承服することのできない、言いがかりのような言い分だった。


お迎えから、直ぐの発病。


それ以来、何度も病院に通いつめて、絶えずRufiの病状に心を痛めつづけてきた。


感謝されこそすれ、非難される謂われはない。