
バシーノは、あまり知られていないバラだとおもう。
品数が豊富な「バラの家」さんや「京成バラ園」さんのHPで検索してもヒットしないところを見ると、現在は販売されていない品種になったのかも知れない。

ことの始まりは、門の横の塀の外側にバラを垂らして、エントランスをゴージャスに飾ろうとおもったこと。
であれば、匍匐性のある修景バラが良いということになり、赤系で一輪咲きのものを探すことにした。
その結果、このバシーノに行き着いた。
塀を乗り越えて、枝を外に垂らすためには、まずは内側の株を十分に育てる必要があると考えた。
そこで高さ70㎝x幅70㎝という超大型の鉢を買ってバシーノを植えることにする。
長い枝が数本伸びてきてので、塀の隙間に入れて外部に垂れるように誘引しようとした。

ところが、バシーノの枝が想像以上に固く、また鋭い棘がびっしりと生えていて、手の施しようがない。
枝の先に棕櫚の紐を結んで、塀の外から引っ張り出すことにより、何とか誘引をすることができた。
初めの数年、花付きが良くなかった。
一季咲きの品種だと思いこんでいたほどだ。
期待していた、エントランスをゴージャスに飾るのには、明らかに役不足に見えた。
それがなんと、小まめに花ガラ摘みをしたり、液肥を与えたりしているうちに、ある年から突然として活性化が始まった。

春の開花後に新しいシュートがいくつか上がってくるようになった。
すると、その新しいシュートに花がつくようになる。
現在の様子は、繰り返し咲きとまでは行かないまでも、株のどこかには花がついている状況である。

このバラはまた、秋のローズヒップをつけた有り様も愛らしい。
こうして、思ったより手間暇はかかったけれど、バシーノは四季を通して表玄関を飾るのに相応しい存在へと成長してくれた。
正直、あれこれと迷うことも多かった。
が、結果としてこのバラを育て続けていて良かったとおもっている。
何より、この品種を通して、根気よくバラの生育を見守ることの大切さを学ぶことができた。
一輪咲きに見えるが、実際には何枚かの花弁が重なっているため「半八重咲き」、と呼ぶのが本当らしい。
朱赤で、しべの黄色のアクセントが印象的な花である。
修景バラにありがちな、人工的に作り出された感じはしない。
どちらかといえば、野性味と素朴さに溢れた美しさがある。
だからといって、原生の野バラとも異なる。
春の最盛期には生命力に満ちた、色彩が踊っているかのような咲き方をする。
いまでは、30年ほど前の作となった。
今後は入手困難な品種と思われるので、できる限り大事に育ててゆきたい。

Bassino
作者:W. Kordes & Sons、系統:シュラブ、作年:1988、産地:ドイツ、色:朱赤、香り:微香、開花性:四季咲き、花形:半八重咲き(小輪)、樹形: 横張り(1.0m程度)