フェリシア


はじめて、世界のバラ展に行ったときのこと。

 

西武球場の中を、隅から隅まで飾るバラ、バラ、バラ。

 

中央の大舞台に踊る、新作のバラたち。

 

有名ガーディナーによる、豪華なコンセプト展示が立ち並ぶ。

 

どれもこれも、見事に映ったのだけど、少し自分には遠い存在に見えた。

 

あれこれ見て歩いて、身も心もいっぱいになる。

 

すると、ふと立ち寄った展示の壁に這わせてあった バラに目が止まる。

 

ほんの2~3本だけの質素な枝ぶり。

 

玄関を模した壁に高さ2m程度のところで、小さくまとめられていた。

 

知らないバラだった。


初めてなのに、どこか懐かしい気がした。

 

完全に脇役の扱いだったけど、そのひかえ目な佇まいが、かえって魅力的だった。

 

パンフレットに、その花の名前を書き残しておく。

 

フェリシアだった。

バラゾウムシの被害に合い、枯れてしまったバタースコッチの跡地に何を植えようかと考えていたとき、フェリシアのことを思い出した。

 

幅の狭いトレリスを用意して、そこにフェリシアを這わせようと算段する。

 

迎え入れたフェリシアは、ひかえ目なようで、実はしっかり自己主張をするタイプだった。

 

イギリスの、良家のお嬢様みたいなバラだとおもう。

 

数本の枝しか伸びずコンパクトてあるが、上へはかなり伸びる。

 

割と、枝分かれも多い。

 

繰り返し良く咲く。


ツルバラではあるが、年に3回は咲いている。

 

咲き揃った姿は、上品にして艶やか。

 

花いろは、淡いようで実ははっきりとしたアッブリコット。


それに、ピンクが重なってゆく。

 

傾向として、枝は先には伸びるけど、途中で切ったもの再生は良くない。

 

従い、株の成長に従い、上の方に花が固まってしまう。

 

下方が寂しいので、クレマチスでカバーすることにする。

 

ブルー系のナターチャを植える。

 

オールドローズとクレマチスの競演は、なんとも美しい。

 

アップリコットと紫がかったブルーの色彩のコントラストが、落ち着いた優雅さを醸し出しているとおもう。

 

また、ナターチャはかなり大きな花を咲かせるため、中輪サイズのフェリシアとはバランスがよい。

昨年の冬、フェリシアの傍にあったコニファーを伐採した結果、日当たりが一段とよくなった。

 

その結果なのだとおもうが、今年の5月になると、フェリシアは新しいシュートを伸ばした。

 

6年目にして、ようやく3本目のシュート。

 

その代わり、出てきたものは、太くしっかりと成長して、1m位の高さになった。


やたらと枝を伸ばされるより、どれだけ扱いやすいことか。

 

風貌だけではなく、この辺りの性格や身の処し方も、賢くて身持ちの固い、お嬢様を感じさせるバラだとおもう。


Felicia

作者: Pemberton、系統: ハイブリッドムスク、作年: 1928、産地: イギリス、色: アプリコットを帯びたピンク、香り: 柑橘系、フルーティ、開花性: 返り咲き、花形:丸弁咲き、樹形:  つる(2m以上)


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コメント: 2
  • #1

    miko (金曜日, 01 9月 2017 18:33)

    今日も癒されました❥
    Thanks for your beautiful roses!

  • #2

    *ここあ* (木曜日, 30 4月 2020 09:46)

    とても素敵なフェリシアですね。
    我が家も今年初めてフェリシアを植えました。
    蕾がたくさん出てきてとても楽しみです。
    素敵な写真ありがとうございます。(^^)